藤田歯科医院
Fujita Dental Centre, Koshigaya City, Saitama Pref., Japan
待合スペースに「まちライブラリー」設置ただ「待つ」以外に機能がなかった医療施設の待合室を、カフェやリビングルームのようにデザインした。 | 歯科医院でお菓子の街を作りました「歯が痛いから歯医者に行く」というコミュニケーションでは、歯科治療に未来はない。予防治療を普及させるには「気軽に立ち寄れる歯科医院」を演出する空間と運営が必要だった。 | 歯科医院 ✕ まちライブラリー「本の紹介」を通じて、街中に広がる書棚をまるごと図書館と見立てる「まちライブラリー」を埼玉県では初めて導入しました。そのためのサロン空間を、歯科医院としては十分なスペースを確保しています。 |
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個室ではなく、コミュニケーションが取りやすい大部屋最近の医療施設はプライバシー優先のために個室化が進んでいますが、藤田歯科医院は「患者〜スタッフ」間のコミュニケーションを促進するために、意図的に大部屋にしました。その代わり、高さH=1,550mmの絶妙な高さのパーティションで、プライバシーも確保しています。 | ゆらゆら波型天井駅前の歯科医院と地域巻き込み型イベントを実施するサロンという異なる機能を備えた空間を一体的にするため、天井はふたつの空間をつなぐ波型天井にしました。柔らかい布で製作したので、風でゆらゆらと揺れます。 | 眼にも優しい医療空間患者さんは天井を見上げることが多い歯科医院で、ゆらゆらと眼にも優しい天井にしました。 |
オペ室はふんわりプライベイト確保予防治療のブースを大空間に配置し、オペなど手術を行うエリアは半透明の布に覆われた空間でプライベイトを確保しています。 | 大人と同じ視線高さになれるキッズルーム子ども向けキッズルームは、どこからでも見えるよう空間の真ん中に配置し、大人と同じ視線高さになるよう、細やかに設計しています。 | 木の香りでお迎えする歯科医院院長ゆかりの岡山県西粟倉村産のヒノキによる床と岩手県久慈市のアカマツによる家具カウンターを受付に配置しました。木の香りでお迎えする歯科医院です。 |
ハロー!技工室院内には、入れ歯や差し歯を製作する技工室も併設しています。自分の身体の一部になるものですから、窓ガラス越しに見学できるようにしました。 | のれんが掛かる歯科医院駅前側の入り口は、のれんでシンプルに仕上げています。 |
Dental office for town and people
街のために集客したい歯科医院
東京郊外、埼玉県越谷市の北越谷駅前にある歯科医院である。当院は、駅前再開発ビル1階のテナントとして入居している。周囲は典型的なベッドタウンであり、大型商業施設や集合住宅が軒を連ねる。ところが、駅周辺には歯科医院が10院以上が集まる激戦区であり、歯科医院としての存在価値の再定義とサービスの差別化が急務であった。
いま、歯科治療は「治療から予防へ」と変化しており、医院スタッフと患者と相互間での「新しい関係」が必要とされている。単に治療をするだけの医院ではなく、新しい関係創出の空間を強く願う院長の想いからスタートした。歯が痛くなってから歯科医院へ来るのでは遅いという。普段から、「カフェのように気軽に立ち寄れる気安さ」をどうやって演出するか、がインテリア設計の課題だった。
昨今主流となっている個室主体の医療施設ではなく、埼玉県では最大級となる診察ユニット13台を持つ診察室は、ひとつの大部屋とした。治療の装備が軽い衛生士エリアには視線に配慮したラーチ合板製パーティションを、プライバシーが求められる歯科医師エリアには柔らかなメッシュターポリン製仕切りを配置した。カルテ記入カウンターは患者に背中を向けない配置とし、スタッフと患者との関係構築に配慮した。
450㎡という広さを活かし、院内での患者の回遊性を高めるため、患者の立入禁止区域は最小限にとどめた。院内歯科技工室の技術と安全性を見せるために、子ども向けの覗き窓を設置した。また、スタッフと患者との会話を生み出すため、スタッフ個人所有の本を集めた大型書棚を設置し、読書会などのイベントも院内で開催している。
多目的に使える会議室、大型テーブル・書棚が設置された待合スペースの間にある大型引戸を開け放すと、100名以上が着席できるイベントスペースが出来上がる。境界が柔らかな空間を、木材と柔らかい布でふわりと一体的に優しく包み込み、空間の目的性を超えた心地良い一体感を創出した。
Fujita Dental Centre is located in front of the station at Kita-koshigaya, typical commuter town in Saitama, and is one of the largest class dental clinics in the metropolitan area. Since there are more than 10 dental clinics in front of the station, its neighborhood is a battleground of dental clinics. In order to survive there, the dentist had to differentiate the policy and service from other clinics.
The main theme of this project is to change the values of conventional dental office. Although no one drops in dental clinics except for patients generally, we designed an approachable dental clinic like café. In contrary to the mainstream of recent medical facilities consisting of private rooms, the clinic has only one large room, which divided by the wooden partition for each patient. It makes the clinic bright and comfortable thanks to the wall-less space.
In addition, a system of participatory library called “machi library” was introduced for regional communication; citizens including patients can have opportunity to talk with the staffs by means of their favorite books on the large bookshelf.
The space has been acquired fans and utilized for a large number of events since opening. An alternative usage of dental office is there.
受賞歴
日本歯科新聞 歯科デザインアワード 2014 最優秀賞
公益社団法人日本インテリアデザイナー協会 JID賞 ビエンナーレ2014 インテリアスペース賞部門賞
概要
事業主: 医療法人 爽美会
工事概要: 室内設計
所在地: 343-0025 埼玉県越谷市大沢3-6-1 パルテきたこし1階(東武スカイツリーライン北越谷駅前)
院長: 藤田 融 (ふじた とおる)
事業統括: 株式会社Energy Labo
設計・監理:川西康之+栗田祥弘+柳辰太郎 / nextstations
設備設計: 株式会社ウェル
施工: 株式会社イシマル